毎日忙しいとは思いますが、おすすめしなくては気がすまない物語があります。
かなり有名なので、ご存知の方も多いと思いますが、よろしければ読んでみてください。
「苦役列車」 西村賢太
ああーきつい。しんどい。荷揚げをしていれば、そうなりますよね。
そういうときには「リアル苦役列車」という言葉がピッタリです。
あらすじ
19歳、中卒。港湾の冷凍庫でその日暮らしをする青年の話。
日当5500円。安ソープランドとコップ酒に浸る生活を送る。
性犯罪者の父をもった幼少時代から人足に至る過程とその後、強烈な劣等を感じて変化を期待しながらも結局人足から抜け出せない日々、何も目標もない。
作者の背景
著者の西村賢太さんは、私小説家です。私小説とは、著者自身の経験をかなり近い形で小説に起こしたものです。
小説の中では、かなり卑猥なワードが登場しますが、著者は相当なスケベだと思います。
芥川賞を受賞されているのですが、受賞の連絡が来るときに、
「ソープランドに行くかどうか迷っていた」と会見で堂々としています。笑
僕が知っている人間で、最も性に素直で人間らしい印象があります。
荷揚げ屋にすすめる理由
小説は非日常を味わい不思議な世界に連れて行ってくれるのが、醍醐味ですが、この小説は荷揚げやにとっては、リアルと言うか共感に近いものを感じてなりません。
ソープランドや卑屈なやり取りなど。金の貸し借りとかよくありますもんね。フォークリフトとか、出てくる言葉がよく似ています。
荷揚げ屋は日払いをしているところも多いですし、建築現場では日雇いという働き方が浸透しています。
港湾の冷凍庫にも似たような背景をもった人がたくさんいるようです。生活水準(マンションとか持ち物とか)や会話の言葉選びによって、「ああこの人俺と違う人種だな」と感じることありますよね。そういった現実を「別の仕事の共通部分」として、客観的に感じることができます。
僕は「なぜ生きるのか」と考えたとき、漠然とした劣等感を拭うためなのかなと、この苦役列車を読んで感じました。実際に何もない自分をこの主人公に重ねてしまいます。
「人足」て差別用語ですけども、人工出しや、人夫とか建築業界ではお馴染みですよね。なんでもしてくれる日雇い肉体労働者のことをいいます。この小説のなかでも頻繁に登場します。
「人間失格」太宰治
デスノートが流行った時期に、この表紙が流行りましたよね。
もし、サンタさんがいたら、純粋な目で「デスノートが欲しい」と言ってみたい。
あらすじ
「恥の多い生涯を送ってきました。」で始まります。
裕福な家庭で育つ。
人を笑わせる幼少期は、こころから笑っているわけではなく、フリをしているだけ。道化の話。
心に陰鬱も持ちならが、周囲をあざむいる。画家を目指すが、遊び人の友人と遊び呆ける。
初めて好いた女性と入水自殺を図るが、自分だけ生き残り自殺幇助罪がかかる。
その後、、年下の純粋な女性と恋に落ち結婚する。奥さんが自宅で強姦される。妻が準備した致死量の睡眠薬を飲む。それでも死ねない。精神病棟に入れられる。
酒薬女病気道化と自身に人間失格の烙印を押す。
作者の背景
太宰治さんは、走れメロスで有名ですよね。人間失格も有名です。
太宰は人間失格を書いたあと死んでしまいます。
荷揚げ屋にすすめる理由
最近You Tubeで、オリエンタルラジオの中田さんが「人間失格」を紹介しています。
なぜ「パーフェクトヒューマン」が「人間失格」を紹介できるのかと。
ある意味、パーフェクトなので、人間失格の部分も兼ね備えているというパラドクスということですかね笑。失格な部分も含めてパーフェクトなのかもしれません。
一見、荷揚げと関係ないように思いますが、荷揚げ屋の中には薬で捕まった人がいました。
人の事をどうこう言えませんが、そうするに至った背景というのもがあると思います。
社会生活の営みに疲れたのか、自分の弱さなのか。健全に見えている人はもしかしたら「お道化」なんじゃないか。特に荷揚げをしている人の周りには、太宰のようなお道化をしている人で苦しんでいる人かもしれません。
というか、酒に溺れたり、嘘を付いたり誰にでもありますよね。自分自身に重ねてみたり、自分の周囲の人に重なる部分があると思います。
荷揚げは、肉体的・精神的にしんどい仕事ではありますが、太宰ほどしんどい人生ではないと、安易な比較でこれからの生きる糧になると思います。
全体を通して、重たい話ではありますが、面白い会話もあります。
女にモテるみたいな話をしているときに、こんな言葉ありました。
「風呂いっぱいの恋文」
「ミルクを沸かして風呂に入った」
とどんだけモテる人おるんや!とちょっとだけ吹きました。笑
著作権が切れているので、青空文庫でも無料で読むことができます。
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